火傷によって頭皮が損傷すると、毛根が破壊されてしまい、髪が自然に生えてくることはほとんどありません。
しかし、そのようなケースでも、「熱傷後の頭皮への植毛」によって髪を再び取り戻せる場合があります。
この記事では、火傷跡への植毛がどのように行われるのか、成功率や注意点について詳しく解説します。
熱傷後の頭皮への植毛とは
熱傷により毛根が失われた部分に、後頭部などの健康な毛根を移植する治療法です。
移植された毛根が新たな場所で定着すると、そこから再び自分の髪が生えてくるようになります。
火傷による脱毛は薬や外用剤では改善が難しいため、植毛が唯一の根本的治療といえます。
植毛が可能な条件
熱傷後の頭皮は、通常の植毛と異なり「皮膚の状態」が成功のカギを握ります。
植毛が可能と判断されるためには、以下の条件が重要です:
火傷から 半年~1年以上経過し、皮膚が安定している
頭皮に 十分な血流と柔軟性 がある
後頭部などに健康な毛根が残っている
傷跡が厚く盛り上がっていない
赤みや炎症が残っている状態では、植毛しても生着率が下がるため、まずは皮膚の回復を優先します。
手術の流れ
① 事前準備
この段階では、患者の火傷の経緯、現在の毛髪の状態、皮膚の性質、そして全体的な健康状態などの要素が総合的に評価されます。
皮膚の血行が悪い場合には、PRP療法や脂肪注入、幹細胞治療などを用いて頭皮環境を改善します。
この段階を丁寧に行うことで、移植後の定着率が大きく向上します。
② 毛根の採取
後頭部や側頭部など、火傷の影響を受けていない部位から毛根を採取します。
主に使用される技術は以下の2つです:
FUE法:一本ずつ毛根を採取する方法
FAT法:再生医療を応用したFUE法
③ 移植
火傷跡の頭皮に細かな穴を開け、採取した毛根を丁寧に植え付けます。
血流が少ないため、通常より低密度で慎重に行うのがポイントです。
定着率と結果
熱傷後の頭皮への植毛は、皮膚の状態によって結果が大きく変わります。
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軽度の火傷跡 |
約80〜90% |
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中等度〜重度の火傷跡 |
約50〜70% |
毛が生え始めるのは術後3〜4ヶ月頃、最終的な仕上がりが安定するのは約12ヶ月後です。
注意点とリスク
傷跡の血流が不十分だと、毛根が定着しにくい
感染や炎症のリスクがやや高い
一度に多く植えすぎると、皮膚がダメージを受けることがある
自然な毛の向きや密度を再現するには高い技術が必要
したがって、形成外科医と植毛専門医が連携して行うことがとても重要です。
まとめ
熱傷後の頭皮への植毛は、火傷跡でも髪を再生できる可能性を持つ治療法です。
ただし、通常の植毛よりも難易度が高いため、経験豊富な医師による診断と、慎重な準備が欠かせません。
時間をかけて頭皮環境を整えることで、「もう髪は生えない」と諦めていた部分にも、再び自然な髪を取り戻すことができます。