薄毛や抜け毛に悩む男性の多くが直面するのが「男性型脱毛症(AGA)」です。AGAは日本人男性のおよそ3人に1人は経験するといわれるほど、非常に一般的問題です。では、果たして男性型脱毛症は「予防」できるのでしょうか?
AGA(男性型脱毛症)とは
AGAは Androgenetic Alopecia(男性型脱毛症)の略で、成人男性に多く見られる脱毛症の一種です。薄毛や抜け毛に悩む男性の多くがこのAGAに該当するといわれています。
AGAは主に男性ホルモンに起因しますが、遺伝や生活習慣なども関係しています。額の生え際や頭頂部から抜け毛が始まり、進行性で少しずつ薄毛が進むのが特徴です。発症した場合、治療を行わなければ薄毛は進行するため、早期に医師の診察を受けることが重要です。
AGAのしくみ
AGAを理解するにはヘアサイクル(毛周期)が重要です。髪の成長は約2〜6年かけて1周するサイクルで、以下の3段階で構成されています。
- 成長期(2〜6年):髪が活発に育つ
- 退行期(2〜3週間):髪の伸びが止まり、毛包が縮小
- 休止期(3〜4か月):毛包の活動が停止
髪の1本1本に独立したサイクルがあり、ヘアサイクルが終了するとその髪は寿命を迎えます。
AGAではこのヘアサイクルが極端に短くなるのが特徴です。
DHTとAGAの関係
AGAには、男性ホルモンのテストステロンが体内の5αリダクターゼ(Ⅰ型・Ⅱ型)により変化して生成されるDHT(ジヒドロテストステロン)が深く関わっています。
DHTは体毛やひげには成長を促す作用がありますが、前頭部や頭頂部の毛母細胞では分裂を抑制し、ヘアサイクルの成長期を短縮させます。その結果、髪は十分に育たないまま退行期を迎え、細く短い髪が増えていきます。この現象を軟毛化と呼び、AGAの進行を示すサインとなります。
AGAのセルフチェック
次の項目に1つでも当てはまる場合、AGAの可能性があります。
- 抜け毛の量が増えた
- 額が以前より広くなった
- つむじ周辺の地肌が目立つ
- 髪のハリやコシがなくなった
- 髪が細くなり、全体的にボリュームが減った
- 家族に薄毛の方が多い
AGAは予防はできるのか?
男性型脱毛症は遺伝の影響も大きいため、完全に防ぐことは難しいのが現実です。ただし、早めに対策を取れば進行を遅らせることは十分可能です。
1. 生活習慣の改善
- バランスの良い食事:タンパク質、ビタミン、亜鉛、鉄分は髪の成長に欠かせません。
- 質の高い睡眠:成長ホルモンが分泌される夜間の深い眠りが髪の再生を助けます。
- ストレス管理:ストレスはホルモンバランスを崩し、抜け毛を悪化させることがあります。
2. 頭皮ケア
- 清潔な頭皮環境を保つことが大切です。
- 強いシャンプーや過度な洗髪は避け、頭皮をやさしくケアすることが予防につながります。
3. 薬物療法
現在、AGAの予防・進行抑制には以下の薬が使われています:
- フィナステリド/デュタステリド:内服薬で、DHTの生成を抑え、毛根への悪影響を防ぐ。但し、継続使用が必要で、中止すると効果が失われる。
- ミノキシジル:外用薬で、血流を良くし、発毛を促進する。
これらは医師の診断のもとで使用する必要がありますが、早期から始めるほど効果が期待できます。
4.補助的・先端的治療
- PRP療法:自身の血液から抽出した血小板を頭皮に注入し、成長因子で発毛を促す。薬物療法との併用が一般的。
- メソセラピー:頭皮に直接ビタミン、アミノ酸、成長因子、ミノキシジルなどの薬剤を少量注入し、毛根の栄養補給や血流改善する。薬物療法との併用が一般的。
- 幹細胞療法・再生医療:脂肪由来幹細胞などを利用し、毛包の再生や頭皮環境の改善を目指す。研究・臨床が進行中。
- 低出力レーザー療法:レーザーで血流と毛包を刺激。クリニック治療に加え家庭用機器も利用可能。
まとめ
男性型脱毛症は、遺伝やホルモンが深く関わっているため「完全に予防する」ことはできません。しかし、生活習慣の改善や早期の治療によって、進行を大幅に抑えることは可能です。