植毛後、しばらく経ってから移植した部分に赤いポツポツや、小さな膿を伴うニキビのような症状が現れることがあります。
このような症状を見ると、「感染してしまったのではないか」「せっかく移植した毛根がダメになってしまったのではないか」と心配になる方も少なくありません。しかし、植毛後に現れるニキビのような症状が、必ずしも一般的なニキビや細菌感染を意味するわけではありません。
医学的には、このような症状は毛包炎(folliculitis)として説明されます。毛包炎とは、毛が生えてくる毛穴、つまり毛包の周囲に炎症が起こった状態です。赤いポツポツとして現れることもあれば、小さな膿を伴う膿疱として現れることもあります。
植毛後の毛包炎を理解するうえで最も重要なのは、すべての毛包炎が同じ原因によって起こるわけではないということです。細菌などの感染が関係している場合もありますが、一方で、細菌感染が確認されない炎症として起こる場合もあります。そのため、植毛後にポツポツができたからといって、すぐに「感染した」「植毛が失敗した」と判断することはできません。
植毛後の毛包炎はなぜ起こるのでしょうか
毛包炎には、毛包周囲の炎症や、新しく成長してくる毛による機械的な刺激など、複数の要因が関係する可能性があります。
植毛後の毛髪は、手術直後からそのまま順調に伸び続けるわけではありません。移植後には毛幹が一時的に脱落し、その後、毛包から新しい毛が再び成長してくる時期があります。この新しい毛が皮膚の内部から表面へ伸びてくる過程で、毛包の周囲に刺激や炎症が起こることがあります。その結果、赤いポツポツや、小さな膿を伴うニキビのような症状が現れる場合があります。
毛包炎はいつ頃起こるのでしょうか
植毛後の毛包炎は、必ずしも手術直後だけに起こるものではありません。
Bunaganらによる植毛後毛包炎の研究では、症状の発症時期は術後2日から6か月まで幅があり、平均発症時期は約1.44か月後と報告されています。
これは、植毛後の毛包炎が単純な手術直後の感染だけでは説明できない場合があることを示しています。手術からある程度時間が経過した後、新しい毛が生え始める時期に炎症が現れることもあります。
植毛後の毛包炎はどのくらい起こるのでしょうか
植毛後の毛包炎は、珍しい合併症ではありません。
Zhouらによる4施設、1,317例を対象とした多施設後ろ向き研究では、植毛後毛包炎の発生率は12.11%と報告されています。
この研究では、4,000グラフト以上の比較的大規模な植毛、45 grafts/cm²を超える高い移植密度、夏季の手術、そして、術後の最初の頭皮ケアを開始するまでに3日以上かかったことも、毛包炎の発症と関連していました。
もちろん、4,000グラフト以上の植毛を受ければ必ず毛包炎が起こるという意味ではありません。また、高密度植毛そのものが悪いということでもありません。しかし、手術規模や移植密度、術後のケアなどによって、毛包炎が起こる可能性が変化することは考える必要があります。
ニキビのような毛包炎ができると、植毛結果は悪くなるのでしょうか
患者さんにとって最も気になるのは、植毛後にニキビのような症状ができた場合、それによって移植した毛が失われてしまうのではないかという点です。
この点について、Bunaganらの研究は重要な情報を示しています。
この研究では、植毛後に毛包炎を発症した27例が検討されました。病変の多くは、少数から中等度の膿疱として現れ、その後、瘢痕を残すことなく改善しました。そして、この研究では、毛包炎が治癒した症例において、移植毛の成長への悪影響は認められませんでした。つまり、植毛後に数個の赤いポツポツや小さな膿疱ができたとしても、それだけを理由に「移植した毛根がダメになった」と考える必要はありません。
ただし、植毛部に持続する赤みや炎症については、別に考える必要があります
Zhangらによる1,090例を対象とした多施設後ろ向き研究では、植毛部に生じる毛包周囲紅斑(recipient-area perifollicular erythema:RPE)について調査されています。この研究では、178例(16.33%)が軽度、56例(5.14%)が中等度、10例(0.92%)が重度のRPEに分類されました。
結果として、RPEが認められた患者全体で、毛幹の脱落がより強く、グラフト生存率が低いことが確認されました。

また、毛包炎は、軽度RPEおよび中等度RPEの発症と統計的に有意な関連を示しました。しかし、これは「軽度・中等度の毛包炎がグラフトを直接傷つけた」という意味ではありません。研究で示されているのは、毛包炎と軽度・中等度RPEとの間に統計的な関連が認められたということです。したがって、ここでは毛包炎そのものの影響と、RPEとの関連を分けて考えることが重要です。
植毛後に数個の小さなポツポツが一時的に現れ、その後改善している場合と、植毛部の赤みや炎症が続いている場合は、同じものとして考えるべきではありません。
なお、この研究では、RPEについて「何日以上続けば長期とみなす」といった明確な期間の基準は示されていません。そのため、植毛後の赤みについて一律に「○日続けば危険」と判断することはできません。
重要なのは、「ニキビができたかどうか」だけではなく、その症状が一時的なものなのか、赤みや炎症がその後改善しているのか、それとも続いているのかという経過を見ることです。
強い痛みや腫れを伴う場合、膿疱が増えている場合、または赤みや炎症が改善せず続いている場合には、自己判断せず、手術を担当した医師や皮膚科医に相談することが大切です。
参考文献
Bunagan MJKS, Pathomvanich D, Laorwong K.
Recipient area folliculitis after follicular-unit transplantation: characterization of clinical features and analysis of associated factors.
Dermatologic Surgery. 2010;36(7):1161–1165
Zhou Y, Zhang J, Yi Y, Xie X, Lei R, Fan Z, Sun P, Hu Z, Qu Q, Miao Y.
Characterization and Risk Factors of Folliculitis after Hair Transplantation:
A Multicenter Retrospective Study.
Plastic and Reconstructive Surgery. 2024;154(6):1115e–1122e.
Zhang J, Zhao Y, Zhang J, et al.
Risk Factors and Hazards of Recipient-Area Perifollicular Erythema After Hair Transplantation: A Multicenter Retrospective Cohort Study.
Aesthetic Plastic Surgery. 2024;48(15):2771–2777